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あえて使える道具をしぼる

多くの道具を操れる人が「できる人」と一般には思われているようだけれど,それが当てはまるのは一つ一つの道具に充分に熟達している場合であって,どの道具も中途半端にしか使いこなせないなら,一つの道具しか使えない人に劣ってしまいます。

数学は一分野であっても多くの道具が用意されていることがあります。そういうとき私は一番原始的なものにしぼって,それを習熟してもらうようにしています。

最初は一つの道具しかないので解決できる範囲は狭いのですが,他の道具もその道具で作れるようになると,一挙に解決できる範囲が広がります。そうなると,多くの道具を平行して使ってきた人たちよりも深い理解をすることになって,彼らを追い越してしまうのです。

「一書の人を畏れよ」と昔の人は言いました。今もそれは変わらないのです。